刀剣乱舞/Manus in manu~手に手をとって~
第42章 神酒 ―番外編―
体が熱い。
どくどくと心臓が早くなる。
あの酒だ…
今思えば何の気なく広間に寄ったのが間違いの始まりだった。国永から注がれたあの酒を飲んだ直後から、体に異変が起きた。
しまったと思った時にはもう遅かった。急ぎ厨に行き、コップ一杯の水を一気に呷ったが体の熱は治まらない。
浅い呼吸をしながら目線を下げた先に見えるのは、形を主張して膨らんでいる自身のそれ。
気持ちとは関係なく熱を帯びているのは何故なのか…と思考を巡らせるもどうにも頭がうまく回らない。しかしこの症状には覚えがあった。
恐らく審神者用の酒を飲んでしまったに違いない…
早くなる心臓をどうにかしようと長く息を吐くがどうにもならない。数日前のあいつを思い出し、解決方法は発散させるのみか、と、前髪を乱雑にかき上げ天井を仰いだ。
「くそ……ッ」
こんな身体では自身の部屋には戻れず、広間からこの空き部屋に来るまでに何度も飛びそうになる思考を必死に保った。我ながらあいつの部屋に行かなかった己を褒めてやりたい。
「はあ…はあ…」
急ぎ空き部屋の障子戸を開け、中に誰もいないのを確認し、ぴたりと障子を閉め部屋の隅に腰を落ち着かせる。