【進撃の巨人/リヴァイ生誕祭】To my darling
第2章 Happy moment in holy night.
沈黙を破ったのはリヴァイだった。
「なぁ、リア。あの曲をもう一度弾いてくれねぇか」
「勿論いいですよ」
「来るときはお前を探すのに必死で、あまりちゃんと聞けなかったんだ」
「はい。…リヴァイさんのためなら、いくらでも弾きますので安心してください」
「あぁ」
リヴァイは嬉しそうに軽く微笑んで、リアはそれを目に焼き付けるとピアノに向かう。
そして隣でリヴァイに見守られながら、そっと曲を弾き出した。
愛情を、感謝を、歓喜を、祝福を。
心を込めて、この世界でたった一人、リヴァイのために、リヴァイを想って弾く。
すると、先ほどまでと同じ曲を弾いているはずなのに、感じるものは全く違った。
どこか切なく懐かしいと思っていたこの曲が、今は愛する人と共に在れることを喜ぶような、前とは正反対の印象を受ける。
ここまで聞き手によって感じ方が変わる不思議できれいな曲は他に知らない。
リアは恐らくリヴァイと会ったことで、受け取り方が変わったのだと思う。まさにリアの心境そのものだったのだから。
かつても、リヴァイのためにこの曲を弾くようになってから印象が変わった記憶がある。
きっと心が通じた愛する人と共にいるからだとリアは思った。
弾き終わって一息つくと、リヴァイが目を瞑っていることに気付く。
それは眠っているとかそういうことではなく、心からリアの演奏を聞き入ってくれている証拠だと知っていた。
じっとその端正な顔を見つめていると、リヴァイがそっと目を開ける。
視線が真っ直ぐリアに注がれて、今日出会った瞬間のように見つめ合った。
「…ありがとうな」
「いえ、リヴァイさんをお祝いしたいだけですから」
祝福の気持ちだけを伝えるけれど、リヴァイは他に含んでいた思いも全て理解してくれたことだろう。