第2章 朝霧―episode zero―
「はい、御影システム開発部です」
「御影産業の……」
こちらが名乗る前に電話の向こうの彼女は言う。
「佐藤様ですね?いつもお世話になっております」
関西訛りの語尾が心地いい、いつも電話を受けてくれる女のひと。
「お世話になっておりますっ、あの、明智さんお願いできますか」
「はい、お待ちください」
受話器を握りながら頭を下げているのを、周りの営業さんたちはやれやれと言いたげに笑っている。彼らに余裕のない笑みを返しながら、切り替わった保留音に耳を傾ける。
この音楽聴くの、今日は何回目だろう。