第4章 甘い甘い金平糖
秀吉もまた、一人城内を探索していた。
怪しい者の動きは無いか…隈無く目を光らせるも、いつも通り慌ただしくも平和な、城の者達が働く光景ばかり。
城内の警備を信長に任されているとあっては、今回の件は秀吉にとって頭の痛い出来事だった。
そこで頭脳労働は三成達に任せ、足で情報を稼ごうとひたすらに広い城内を歩き回る。
盗まれたのが例え、信長様の健康を脅かす可能性のある金平糖であっても――
必ずや、とまた決意新たに。
拳を握りしめ、とうとう城の外、広大な庭へと足を踏み出す。
今日も快晴だと言うのに、さんさんと降り注ぐ陽の光の中、顔も挙げられない…
「わっ、と!」
「っと、悪い。前を見てなかった…大丈夫か?」
「これくらい、大丈夫ですよ!こちらこそばたばたと…秀吉さん、ぶつかってしまいすいませんでしたっ」
「大事がないなら、良かった。ほら、手を貸せ」
尻餅をついてもなお、いつも通りの笑顔を向けられ。
秀吉は安心してその手を取り、立ち上がるのを手伝ってやる。
はにかみながら土を払う仕草にほんの一時、癒されるも…今の状況を思い出し、グッと気を引き締めた。
「城内に、賊が入った。
お前も今日は部屋で大人しくしていろよ。
変な輩を見かけたら、すぐに言うんだぞ」
ぽんぽん、といつも通り頭を軽く叩き。
足早に去っていく秀吉を見送る。
「ぞく?
…こんなに強い人が集まってる所に、物好きな人もいるんだなー。
佐助みたい」
そう言ってまた、駆け出す袂からころころと。
零れ落ちた薄緋色の星屑に、誰も気付くことは無かった――