第3章 ラブリーディストーション(徳川家康)
「ん、はぁっ…」
下唇を噛み締め、声を堪えながら。
私の身体の下、寝そべりながらこちらをじっと見上げている、彼…家康の、視線を避ける様に目を瞑った。
視界を閉じる直前に見た彼の表情は、僅かに微笑んでいて。
なのに、している事はとてつもなく意地が悪い――
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『、跨って』
ぐすぐずに溶かされた心と体に、かけられた言葉。
そんな事、と思いながらも。
ふらふらと浮かされるように、彼の言うがまま。
奥に刺さるような熱を感じれば、もう我を忘れてしまう。
『自分で動いてみなよ、ほら』
そんな言葉を、声を反芻しては、またじわり、と潮が満ちるように。
照れいる暇も与えられないまま、今に至るのだ。
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「も、やっ…家康っ…!」
終わらない波から抜け出したくて、助けを求め懇願する自分の声が。
はしたなく強請るようにも聞こえて、恥ずかしさに涙が滲む。
私の言葉に応えるようで、しかし答えてはくれないまま。
家康が小さく腰を揺らしたのに合わせて、強ばった身体はびくり、と仰け反る。
そんな大袈裟な動きに耐えかねた、汗とも涙とも分からない滴が一粒。
私の頬のラインを伝い、顎の先から家康の口元へと落ちた。
ぺろり、と舌を出して、それを舐めとる仕草に。
それを見ているのに気づいている、鋭い視線に、どうしようもなく欲情する――