第34章 ※目撃と選択と、三人と行為と
——point of view 中崎エリ
誰かを選ぶという事は、誰かを選ばないという事。
そんな事は分かっている。
分かっていて…誰も選ばない私は、卑怯だ。
他人を傷付けないように、選択をしない。
聞こえは良いけれど、それは違う。違うの。
本当は…自分が傷付くのが怖いだけ。
だって傷付いた誰かを見るのは、辛いから。
まして自分のせいで傷付いた人を見るなんて、余計に悲しい。
だから私は、自分が傷付かないように、必死になって己を守っているだけ。
真っ暗な、何もない寂しい空間で。
顔を両手で覆って立ちすくむ私を、客観的に見ている私がいる。
そして、その私は佇む私に語りかけるのだ。
“ いいじゃない。それで。ずっと選ばなければ、ずっと三人でいられる ”
“ 二人共が好きなんでしょう?じゃぁ無理して選ぶ必要なんてある? ”
“ 大丈夫。このままを維持さえしていれば、誰も傷付きはしないじゃない ”
“ 大丈夫。このままでいい ”
佇む私は、この甘い言葉に何度流されて来たのだろう。
本当に、それでいいのか?
これが、今が私達にとっての正解なの?
私は、怖い。
二人に、私がこんなにも浅ましい考えを持っている事を知られるのが。怖い。
二人共欲しいから、二人のどちらかを選ばないなんて。こんな卑怯で最低な考えを持ち合わせている自分を、二人に知られてはいけない。
でも…もし。
あの二人が私の考えている事に気付いてしまったら…
一体彼等は、私にどんな言葉をかけるのだろう。