第34章 ※目撃と選択と、三人と行為と
『サスケ君、背が伸びたね』
「!」
やはりサスケはまだ十代の青年。半年もあれば随分と背が伸びる。
「…そういうアンタは、髪が伸びたな」
サスケは、私の髪にさらりと触れて言った。
『そういえば、ここに来てから極端に短く切ってないから…
サスケ君は、女の人の髪は長い方が好き?短い方が好き?』
「…別に強いこだわりはないが…どちらかというと長い方が好きかもしれない」
『そっか!じゃあ切らないでおこうかな』あはは
「…またエリはそういう事を言う。深い意味も、ないくせに」
『……』
ここ最近、彼は今まで以上に修行や鍛錬に力を入れるようになっていた。
直接彼の口から聞いたわけではないが。カカシの話では、目の前でセツナに私が攫われてしまった事。自分の力で私を助けられなかった事。これが随分と堪えたらしいのだ。
そして、そんな彼と私の距離は、以前と何も変わっていない。
『…今日も修行?はい。お弁当。頑張ってね』
「あぁ…行ってくる」
サスケは 私から手製の弁当を受け取ると、出かける前の挨拶と共に私の頭を撫でた。
やがて鍛錬の為に外へと出て行った。
自分の手で頭に触れる。
先ほどまでここに乗せられていた、彼の手を思い出す。
大きくて、優しくて…。
あれは…決して子供の手などではなく、立派な…大人の男性の手だ。
その時、ガチャリと玄関が開いた。
『あれ?サスケ君、何か忘れ物…』
ふらふらと、家の中に入って来たかと思うと。
なんとも危なげな足取りで私に遠慮なく体重を預けて来る。
私はそんな今にも倒れそうな彼を懸命に支える。
『だっ、大丈夫ですか!?はたけさん!』
そう。今玄関を開けて家に入って来たのは、サスケではなくカカシだ。裏の任務から明けたばかりの、疲れ切った彼。よく見る光景だ。
「た、ただいまー…。ま、なんとかね…」
『おかえりなさい、とりあえずベットに行きましょうね』
「…うわ、それ。もう一回聞きたい…」
ベッドに行きましょう。というワードがお気に召したご様子。
勿論そんなリクエストには答えず、私は共倒れにならないように気を付けながら彼を寝室まで運んだ。