第33章 帰郷と目論みと、光と闇と
——point of view はたけカカシ
俺は、一体何をしてるんだろうか…
彼女を傷付けて、俺も傷付いて。
そもそも、なぜ俺はエリを諦めようとしていたんだっけ。確固たる意志の元に決断したはずだったのにね…
今はもうそんな事すら思い出せないんだ。
今分かるのは、俺はあの日…
確実に彼女に嫌われたという事。
彼女が初めて、俺に本気の悪意を向けて言った
“ 最低 ”
一生会う事が叶わないのではないかと思わせる
“ さようなら ”
何度、夢に見ただろう。もう分からない。
でも、あれは絶対的に俺が悪いよね。我慢の糸があっさり切れた。
セツナとのキスを目撃した直後ですら、我慢出来ていたのにな…
エリが、泣いてて…
一生懸命俺に自分の気持ちを訴えてくれた。
俺の気持ちが分からなくて辛いと泣いた。
…嬉しかった。
俺の事を嫌いになりたいと言いかけた。
…耐えられなかった。
もう、自分の中の何かが弾けて、気が付いたら 唇塞いじゃってた。
ただがむしゃらに貪って、彼女の吐息ひとつも漏らしたくなくて。ただ夢中でキスをした。
エリも抵抗するどころか、俺の頭にすがりついて懸命に応えてくれた。
まるで、このキスを待ってくれていたかのように感じられて。余計に気持ちが止められなくなった。
いつまでも、この夢みたいなキスを続けていたかったけど。そうもいかなかった。
俺は、思い出してしまったから。
俺は…まだ諦めていない。
エリを元の世界に帰す事。
嫌われるって分かってて、彼女に最低な言葉を吐いた。
このキスを、たった一言で嘘にした。
これで、本当に終わったと思った。
いや実際に終わったんだよ。
だって、もう何日も彼女の顔を見ていない。
声を聞いていない。
俺から会う事も…もう、しない。
今度こそは 間違わない。
そんな時だった。
俺は先生に、大事な報告があるからと呼び出された。
正直…嫌な予感しかしなかったんだけどね。
つい、祝言の日取りが決まった。なんて言われてしまったらどうしよう。なんて、怖い妄想なんかしてしまったり。
でも、先生の口から聞かされた言葉は…
怖いどころか、俺が心から望んでいた言葉だった。