第32章 花の後と、墓参りとモノクロームと
春一番。突如として突風が私の隣を通り抜ける。
ザァァァと、強過ぎる風の音が私の耳を騒がしくした。
『っ、あ』
私が集めていたゴミの一つが、その突風によって攫われてしまう。
私の手を離れてしまったビニール片は、みるみるうちに離れた場所に運ばれる。
私は走ってそれを追い掛ける。
なかなか止まってくれないそれは、桜の木の幹に引っかかる事でようやく静止した。
『よかった…』
私は息を整えながら、ビニールをやっと回収。
顔を上げると、そこには彼が立っていた。
『!!!っ、』
「元気そうだな」
『セツナ!』
私は、彼に駆け寄る。
最後に会ってからそんなにも日にちは経っていないというのに。どうしてこんなにも懐かしい気持ちになるのか自分にもよく分からない。
「そんなに俺に会えて嬉しいか」犬みてぇ
『嬉しいよ!』あはは
「………昨日」
セツナは、私から視線を外すと。頭上に咲き誇る桜の花を見て言った。
「ミナトとカカシに会った」
『…そう』
「兄貴の、墓の場所を聞いた」
『もう、行ってきたの?』
「いや…まだだ。
先に、エリに会いに来た」
どうしてだろう。とは感じたが、素直に嬉しいと思った。すぐにでも兄に会いたいはずなのに…
私に先に会いに来てくれた理由は…?
「一緒に、シュンに会って欲しくてな」
『え!私もお墓に行ってもいいの?』
「ってかもう連れてくって決めてる。ほら行くぞ」
『ちょ、ちょっと待って!今すぐ!?』
セツナは相変わらず急だ。いつだって彼は突然現れて私を掻き回す。
『少し待って?私いま片付け』
花見の片付けを私だけ放り出して、セツナについて行くわけにはいけない。
「今すぐ行くぞ。俺はもう十分待った」
『えぇ!?』
セツナは私の腕を掴んで、そのまま歩き出そうとする。
しかし、一歩だけ進んだところでセツナはピタリと立ち止まる。考え直してくれたのだろうか。
「……お前、少し見ない間に取り巻き増えたな」
『んん?』何?
「…イケすかねぇ木ノ葉の狐どもが わらわらと」
彼は何を思ったか、急に私を横抱きにした。
『わっ』
「何匹いようが、全部振り切ってやる」
セツナは呟いて、私を抱いたまま飛んだ。