第32章 花の後と、墓参りとモノクロームと
——point of view 猿飛アスマ
宴会の後ってのは、なんとも言えない哀愁漂う空気感になる。
俺はそんな空気が苦手だ。いつまでも気の合う仲間と馬鹿言い合って騒いでいたくなる。
そんな気の合う仲間の筆頭に、はたけカカシはいる。特に大切な仲間の内の一人だ。
まぁ、照れ臭くて本人の前ではまかり間違っても口には出さねぇが…
カカシがどんな人間か、俺の目から見た奴は…
仕事人間だ。やっぱり奴を語るにおいて “ 仕事 ” というワードは外せない。
命令遵守、私を殺し、忍の道を直走る。
まぁ、意外と熱い。そんな男。
そんな男が、だ。
俺に自分の仕事押し付けて、女の尻追っかけてやがった過去がある。
あれは…去年の秋くらいだったな。
夜遅くに俺の家に突然やって来て、賄賂である煙草押し付けて奴は言った。
これやるから、明日の仕事代わってくれと。
俺は驚いた。でも、嬉しく感じたのを覚えている。
ついにカカシも、そういう特別な人間を作る気になったのだと。友として素直に喜んだ。
しかし、だ。
先日、ガイと街を歩いてたら、カカシと紅に出会った。
珍しくベロベロに酔ったカカシに、紅がうんざりした顔で付き合っていた。
俺たちはカカシを俺の家に連れ帰り、詳しく話を聞いた。
奴の口から語られた言葉はこれだ。
“ こんなにも好きなのに、想いは伝えられない ”
“ 四代目に強奪される ”
“ 恋愛って、どうしてこんなにも難しいんだ ”
まぁ出るわ出るわ、カカシらしくもない言葉の数々。こいつがこんな弱音を俺達に曝け出すのは初めてだ。
そもそもお前、ついこないだまで 自分にとって女は必要な存在じゃないとかほざいてたくせに。
それどころか、異性は 大して好きでもない食い物と変わらないとまで言ってたくせによ。
そんなカカシに、ついに訪れた春。もうむしろ事件だ。これは。
俺だけじゃなく、ガイも思ったはずだ。
友のピンチに、なんとか力になりたいと。
俺達は “ 作戦 ” を実行する為、ガイと共にエリを探した。