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モノクローム【NARUTO】

第29章 別れと髪と、湯と理性と



——point of view 時任セツナ



あぁ、俺は多分。地獄に落ちるんだろうな。

コウとサキの墓前の前で手を合わせながら、そう思った。


二人だけじゃない。

今回あの黒の塔に集まって、命を散らしていった抜け忍達に 俺は顔向けが出来ない。

皆んな、木ノ葉に報復を。という理由で俺に力を貸してくれていたのに。

俺は、俺の心は途中でポッキリ折れちまった。


いや…折れたという表現はちげーな。

踏み止まれたんだ。俺の場合は。


俺は、運が良かった。
真っ暗な、深くて冷たい海で溺れてるところを。
エリにすくい上げられた。


いま、心の底から思う。

お前達にも、そういう光のような存在がいれば。俺みたいに踏み止まれたのかと。

死なずに、済んでいたのかと。


俺は、立っているのがしんどくなってきて墓石の前に座り込む。

目の前に沈んで行く夕日の光が、眩しくて俺の目を刺した。
しかし、今ではそんな光も美しく思えてしまう。

こんな俺を、お前達は妬ましく思うか?

自分達はもう見る事すら叶わないのに、俺だけがこうして光を美しいと思う。

ずるくて、汚いと思うか?


でも、本当にごめんな。俺…

“ もう少し、生きててもいいか? ”

ギリギリ自分の耳に届くくらいの声で呟いた。
サキとコウ。そして死んでいった仲間達へ、想いを馳せながら。


すると、左肩と、右肩それぞれに。

温かみのある手を乗せられたような気がして、思わず俺は後ろを振り返る。


勿論、そこには誰がいるわけでもなかった。

でも。なんとなくだが、行き道よりも帰り道の方が足が軽くなった気がした。

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