第26章 敗北と五年前と、立場と単騎と
こうなってしまえば、むしろ好都合だ。
向こうは私が嘘をつく事が出来ないと思っている。しかし実際には虚偽がし放題なのだ。
答えようによっては、嘘を事実と捏造出来るという事。
さぁ、どんな質問を投げかけてくる?
「お前は、本当にただの一般人か?忍としての訓練は一切受けていないのか?」
サキの最初の質問はそれだった。
『…受けていない。私はただの一般人』
嘘をつく必要のない場面では正真正銘 真実を答えるつもりだ。
「お前は普段、何をして過ごしている?仕事は」
『アカデミーの、非常勤教員』
「…アゲハの話と一致しますね」
「……続けろ」
その後も、質問がいくつか続いた。
私自身の事。それに里の情報などを聞き出されそうになった。しかし、後者に至っては本当に知らないので答えられるはずもない。
「…サキ」
「はい」
シュンが、彼女の名を呼ぶと。サキは姿勢を正して彼の方へピシっと向き直る。
「お前はもういい。下がれ」
「し、しかし」
「外せ。ここからは…俺自身が質問する」
彼女を下がらせるという事は…自分と私以外には聞かれたくない事を質問されるのだろうか。
どのような質問がシュンの口から飛び出すのだろうと想像し、少しだけ緊張した。
しぶしぶ退室する彼女。
自ずと、部屋には私とシュンの二人きりとなる。
「…お前が、はたけカカシと波風ミナトの 特別な存在だというのは本当か?」
ここにきて、カカシとミナトの名前が…。やはり。彼の狙いはこの二人のどちらか…?
それならば、きっぱりと否定して私に人質としての価値をなくしてしまうべきだ。
『違う。二人とは普通の友人…っ!特別な関係なんかじゃない』
「……」