第26章 敗北と五年前と、立場と単騎と
ベットで横たわり、一向に起きる兆しのなかったサスケの瞼が。少しだけピクリと反応した。
それにいち早く気付いた俺は、もちろん叫んだ。
「サスケ!!」
隣に立っているミナトも、同じように彼の名前を呼んだ。
「……っ、」
眉間に皺を寄せ、苦悶の表情を浮かべながらも。サスケはなんとか瞳をこちらにやった。
「意識が戻ってよかった…。
サスケ、君は演習場の近くで倒れているのを発見されてここに運ばれた。覚えてる?」
「……くっ、///」
サスケが酸素マスクを外して、身を起こそうとする。
俺はそれを両手で制した。
「起きなくていい。肋の骨とかバキバキだから。
そんな状態で 辛いと思うが…話せるか?」
「い、ま…何時だ、」
サスケが意識を取り戻して、初めて発した言葉だった。
「夜の十時になるところだよ」
「…も、う、四時間以上、経ってる。
アイツが、攫われてから」
サスケの言葉を聞いて、俺とミナトは目を瞑る。
エリが攫われた事を既に俺達は把握していた。
サスケのポケットにその旨を伝える書簡が入っていたのだ。
「奴の、狙いは…どっちだ」
サスケも、事のあらましは把握しているようだ。
彼女が。人質として利用されてしまった事実を。
「……それは、俺達二人とも。だよ」
ミナトがサスケを見下ろして、事実を伝える。
書簡の内容を要約するとこうだ。
エリを返して欲しければ、俺とミナトが二人揃って時の里内部にある黒の塔に来る事。
もし二人揃って来なかった場合や、多勢の部隊で乗り込んできた場合は…
彼女を殺す。