第26章 敗北と五年前と、立場と単騎と
——point of view うちはサスケ
こうなる事は、分かっていたはずだろ。
エリがこの世界に来て、懇意にしていた人間を考えれば。
簡単に予想出来たはずだろ。彼女を人質に取られる未来など。
木ノ葉隠れ里の長である波風ミナト。
同じく木ノ葉のエリート忍者はたけカカシ。
そして、うちは唯一の生き残りである俺。
奴の狙いは、一体どれだ。
気絶した俺を放置した事を考えると、俺は選択肢から外しても問題ないと思う。
カカシか火影か…
どちらかは分からないが。それよりも
奴の言う通り、俺は平和ボケしていたのだろう。
今のこの状況が、それが事実だと物語っている。
それが、何より腹立たしかった。
自分で自分を、殺したいくらいに。
絶対、俺が守るって思ってたのに。
俺が、守るって決めていたのに…。
攫われた時のエリの言葉と表情が、脳裏に焼き付いていた。
自分はどうなったっていいから、俺を傷付けるのはやめてくれと。
必死に懇願したエリ。
頼むから、そんな顔をしないでくれ。
お前のそんな顔は、見たくないんだ。
必ず、助け出してみせるから。
———生きて
どんな手段でも、どんな汚い事をしてでもなんとか生き延びて…
また、俺にお前の笑顔を見せてくれ。
アンタは…
復讐という荊に囚われた俺の、
唯一の希望で、光だ。
そんなエリを失ったら俺は、もうどうなってしまうか分からない。
俺の意識はまだ深い深い、闇の中で。
遥か遠くで、カカシとミナトの声が聞こえた気がした。