第23章 破術と秘密と、風邪と言の葉と
シカマルは、結局その後すぐに帰った。
奈良家で採れたという薬草を煎じた漢方薬を置いていってくれたのだった。
“ アンタはいつも頑張り過ぎなんだよ。
たまには俺みたいに、他人頼って楽ーに過ごしたっていいんじゃねえの? ”
シカマルの言葉も、たしかに私の胸の中にしっかりと吸い込まれていった。
『はたけさん…私、なんだか肩肘張り過ぎていたのかもしれませんね』
私は、隣で本を読むカカシに問う。
するとすぐに、本を閉じるパタン。という音がした。
「…せっかく俺が言いたかったのに、みんなが次々代わりに言ってくれちゃったんだよね。
エリは、自分の存在価値を見誤ってるよ」
“ 貴女が笑ってくれてたらそれで安心ですから。
それ以外は、別にどうでもいいです… ”
“ 困った時はお互い様ですから!
何か力になりたいんです ”
“ アンタはいつも頑張り過ぎなんだよ。
たまには俺みたいに、他人頼って楽ーに過ごしたっていいんじゃねえの? ”
みんなの言葉を、ひとつひとつ宝物みたいに胸の中で思い出してみる。
「役に立たないと、とか。
常に頑張っていないと、とか。
そんな事は考えなくて良いんだよ。ただ君は、
俺の隣で息をしてくれているだけでいい」
カカシが真顔でそんな事を言うものだから。
つい吹き出してしまう。
『…っふ、ふふ、息、ですか』
「お。いいね それそれ。そうやって笑ってくれてると なお良し」
風邪なんて、辛くて嫌な事ばかりだと思っていたのだが。
この世界でなら、そんな風邪すらも嬉しい事を次々に巻き起こしてくれるのだった。