第21章 イブとヤキモチと、報いと長期戦と
「…看守の仕事は順調?すまない。君には酷な役割だと分かっていて任せてしまって」
「とんでもないです。この命、カカシ様に救われました。だから、貴方の為に使いたいのです」
…どこかで聞いた台詞だと思った。
「…君の覚悟は、十分伝わってるよ。
それで、俺を探していたみたいだけど?」
「はい。初音様にお渡ししようと思っておりました近況報告書です。しかし、カカシ様に直接お渡しするように仰せつかりましたので」
華氷は、懐から文を取り出すと。それをカカシに手渡した。たったそれだけの所作なのに。
なぜだか胸が痛んだ。
「確かに、受け取ったよ。後で読ませてもらう」
「…はい。お願い致します。
今日は…一目でもお会いできて、嬉しかったです。では、私はこれで。お休みのところ 失礼致しました」
そう言って華氷は去って行った。その背中を、私はカカシよりも長く見送った。
「ごめんね、今日はなんだか、俺の知り合いに次々に会う変な日だな…」
カカシは、再度私の手を取ろうとしたが。
私はそれを受け入れられなかった。どうしても今は、カカシと手を繋いで町を歩く気にはなれなかったのだ。
「…エリ?」
そんな私の顔色を伺うようにカカシが覗き込む。
『す、すみません。なんでもないんです』
私は必死に取り繕うように言葉を吐いた。
「なんでもないって顔じゃないでしょ。
…少し、話そうか。ちょうどすぐそこが公園だし」