第2章 優しい死神と、おにぎりと大根と
『彼女はいないんですか?』
「……え??き、気になる?それ」
何故か少し距離を詰めてこられたので 私は思わず逆に距離をとる。
『そりゃ、気になりますよ』
「…そっかぁ。気になるかー」よし
なぜ少し嬉しそうなのだ。
『だって、もし恋人でもいるなら、私みたいな素性もよく分からない女が、一つ屋根の下にいるなんて…。
お相手にすれば気の毒すぎます』
「………え、まさか、それだけの理由?」
『??はい。それだけですよ?』
「…はぁぁ」
大きな溜息をつき、明らかに落胆した様子のカカシ。
さっきまではあんなに嬉しそうだったのに。今は反対に意気消沈といった感じ。
この人は忍だというのに、こんなにも感情の起伏が私にバレバレな大丈夫なのだろうか。
チラリと隣の彼を盗み見る。
垂れ気味の目尻は、優しそうな雰囲気ではあるが お世辞にも忍らしさはまるでない。
ポケットに手を入れて歩く様も、引き締まった空気感はまるで感じられないかった。
もしかするとカカシは、忍としては優秀な部類の人間ではないのかもしれない。
なんて、かなり失礼な憶測を立ててしまう。
「いないよ」
『え?』
失礼な事を考えていると、カカシが先ほどの質問に答えをくれる。
「彼女なんていないよ。ま…気になる人ならー
いるかもしれないけど、ね?」
『そうなんですね。分かりました。
では、私は邪魔になるような事は絶対にしないので、もし家にその方をお呼びするような事があれば遠慮なく教えて下さいね』
「あ……なるほど。君はそういうタイプの人種なのね」にぶにぶ系の…
『人種…?とは』
「あーいいよ。いい。こっちの話。まぁ鋭い類の人ではないと思ってたけどね…
苦労しそうだな、これは」はは
カカシは再び溜息をひとつこぼした。
なんとなく、私に対し失礼な事を考えていると予想はついたが。
さきほどまで私の方こそ彼に対して無礼な内容の想像していたので。お互い様過ぎて文句の一つも口にする事は出来なかったのだった。