第15章 見聞と新聞と、建前と本音と
なんとなく玄関の扉を開けづらくて。
ドアノブに手をかけたまま、一言目に何と言葉を発するべきか考えていた。
すると 俺がドアを引いていないにも関わらず、急に玄関が中から開いた。
思わず俺は身を引いて、ドアの直撃を避ける。
『……』
出て来たのは当然エリだった。
「俺の気配が、分かったのか?」
『そんなの分からないよ…でも よかった、サスケ君帰ってきてくれた…。よかった…』
心底安堵した表情の彼女は、相変わらず時折カンがおそろしく良い。
『今日のご飯は、サスケ君の好物で揃えてみたから。はたけさんが帰ったら一緒に食べようね』
「…あぁ」
テーブルには、俺の好きな食材を使った料理が所狭しと並べられていた。
『あの、サスケ君。今日はごめんね。私の無神経な言葉で傷付けた。本当に、ごめんなさい…』
「いや…」
こうも素直に謝られてしまうと、俺が色々とややこしく考えすぎていただけかも知れないと、馬鹿らしくなってしまう。
「俺の方こそ…駄々をこねたな。悪かった」
『…分かって欲しい。あんな言葉はただの言葉だから。自分を守る為の、安っぽい処世術のつもりだったんだけど…。
でも、やっぱりやめる』
「やめる?どうしてだ」
『自分の気持ち、これっぽっちも入ってない言葉並べて。嘘で塗りたくっても、きっと良い風に転ばないって。思い直したから。
サスケ君のおかげで思い出したんだ。
建前と本音使い分ける汚い大人なんて、私はずっと嫌いだったのに。
私はいつも、嘘つかない素の自分でいたい』