第15章 見聞と新聞と、建前と本音と
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「お前…本当に馬鹿だな」
「………」
カカシが追いかけてくるのは気配で分かっていたが。こうも簡単に追いつかれてしまう事に、俺はさらに苛立ちを募らせた。
「うるさい。はなせ」
「ちょっと待ちなさい。お前こうでもしないと大人しく話聞かないでしょ」
ご丁寧にもカカシは俺をワイヤーで木に縛り付けた。
「サスケさ…お前ももうそこまでガキじゃないんだ。さっきの言葉がエリの本心じゃない事くらい分かるでしょ。
彼女は、俺達の為に命使いたいって言っちゃうような子だよ?」
そんな事は、分かってる。
頭では理解していたつもりだった。
けれど実際にあの言葉を聞いた時腹が立ったのだ。
「…アイツも、アンタも。どうしてあんな嘘を平気な顔してベラベラ並べられるんだ。
何も偽る必要なんかないだろ」
カカシはわざとらしく大きなため息をついて見せた。
「サスケは分かってないなぁ。女の世界を」
「…は?」
「女ってのはな、女にあたるもんなんだよ。
どれだけ男が悪かろうが、敵は女なんだ。
だから…俺やお前がエリに特別な感情を持ってるっていう噂がアカデミーに広がったら、
辛い仕打ちを受けるのは彼女だ」
なんて、くだらない話だ。
「そんなもの、俺がエリを守ればいいだけの話だ」
分かってる。そんな事は無理だという事くらい。
四六時中、彼女に張り付いて。危険が及ばないように見張り続けるなんて…
全く現実的じゃない。
目の前のこの男は、そういう事も全部考えているのか。
自分が出来る範囲で、自分が守れる方法で。
自分の気持ちを押し殺してでも…。
「…分かったら、帰ってからちゃんと謝れよー。エリ気にしてたぞ。
俺が見聞を追いかけようとしたら、サスケの方を追えだってさ。
フミを逃せば、自分がこの後大変な目に合うって分かってたはずだ。それなのに、彼女はお前を選んだんだよ」
そう言って、カカシは俺を縛っていたワイヤーを解いた。
カカシの口から聞かされた “ 俺を選んだ ” という言葉がずっと頭の中をぐるぐると回ってた。