第13章 初任給と偶然と、パンツと学校と
——point of view うみのイルカ
カカシが連日、極秘に依頼していた任務が パタリと止まったらしい。
それがどういう意味をなすのか俺には分かる術は無いのだが。
あの夜から、俺の頭を離れない。
彼女のふわりと笑った表情が。
上司でもあるカカシの、あの異様なまでの牽制も。なんら意味をなさなかった。
自覚してしまえば、もう自分の気持ちを誤魔化す事など。どうあがいても不可能だ。
なんとかして、また彼女に会いたい。
しかし…一体どうやって。
俺は彼女が、普段何をしているのか。どこに住んでいるのか。
何もかもを知らなさすぎるのだった。
いや…
それは嘘だ。なんとなく気付いている事に強引に蓋をしていた。
彼女はおそらく…あの家に、カカシの家に住んでいるのであろう。
台所に立つ時の、勝手知ったるあの感じ…
あー、本当に気付きたくなどなかった。
と、いう事は…やはりカカシとは、既にそういう仲なのだろうか。
俺はぶんぶんと頭を振る。
何もまだそうと決まったわけではない。
勝手に決め付けて、この気持ちを殺す事など馬鹿らしいではないか。
久しぶりに、自分の中に芽生えたこの感情。
まだ消してしまうには忍びない。
とにかく、もう一度会いたい…。
なんとなく夕飯の買い物に来て。
なんとなく商店街をぶらぶらして。
なんとなく辺りをキョロキョロしていると。
重い荷物なんか抱えて困っている、あの人にばったり出くわしたりしないものかと。
俺は今日も、甘い夢を妄想している。