第2章 優しい死神と、おにぎりと大根と
『…出来る事なら』
頭上で固まったままの、
腕が振り下ろされるのを待った。
しかし、やはりそれはいつまで経っても動かないままだった。
「…真っ平だよ」
手の平は優しく私の髪に触れた。
『…っ!!』びく
「……」
優しさしか持ち合わせていない、こんな温かな手であっても。私の体は拒絶しか出来ない。
サスケに腕を掴まれた時ほど、強い拒絶反応を示す事はしなくて済んだが、本当に…。こんな自分が心底嫌になる。
「……大丈夫だよ。急に触れてごめん。
ねぇエリ。俺はたしかに人の命を奪う事もある仕事をしてる。しかも、生きたいっていう意志のある命すらも奪う。
だからこそ、プライベートでは極力…
人に優しくありたいと思うんだ。
今俺の目の前には、命を投げ出してしまいたい死にたがりが一人。
いつもは奪う事が多い命だけど…
君の命は、救いたいと思っているよ」
カカシの、囁くような語り部に。
少しだけ心がほぐれていく心地がした。
ずっと、死神に会いたいと思っていた私に遣わされたのは彼だった。
それが私に取って、良い出会いだったのか そうじゃないのか。分かるのはもう少し後になってからだろう。
『…ありがとう、ございます』
今度こそ、心からの感謝の気持ちだった。