第2章 優しい死神と、おにぎりと大根と
——point of view うちはサスケ
中崎エリ。
目の前で寝ている、さきほど 俺が手刀で落とした女の名前らしい。
カカシからそう聞かされた。
俺はじいっと、ベットに横たわるこの女を観察する。
うん、非常に弱そうだ。
あと、里に害を及ぼすような類の人間ではない。という事も聞いた。
絶対に怪しいと思ったのだが…
まぁそれは、あとで自らの耳で確かめる。
起きてから問いただすとしよう。
…思えば、俺はこいつの寝顔ばかり見ている気がする。
まぁ今回は俺の責任なのだが…
いやあれは致し方なかった、と思う。
腕を掴んだだけであれだけ暴れられ、情けない話ひどく狼狽した。
それで気がついたら…
手刀で落としてた。
それにしても…なぜ急に人が変わったように暴れたのか。俺に触れられる事が、その性格が豹変してしまうくらいくらい気に食わなかったのか…。
そう思うとなんか、かなりいらついた。
後ろを振り返ると、忙しなく掃除に勤しむ カカシの姿が行ったり来たり…。
いまさら少し掃除をしたところで、何が変わるというのか…
俺はカカシの目を盗んで、彼女の額に自らの手を当てがった。
熱はないようだが、少し汗が浮いていた。
俺は洗面台で濡れタオルを用意して、その額にそっと乗せた。
忍びとしての訓練を受けていない女と接点を持つ事は決して多くない。
ましてこうして自ら触れたのは初めての経験だ。
訓練を受けていない女というのは、こんなにも儚げで。
あんなにも力がなくて。
こうして触れても、目を覚ましたりもしない生き物なのか…。
そう思うと、なんだか心臓の辺りがギュっとなって。
ほぼ無意識にもう一度彼女に手を伸ばしていた。
しかし、背後にカカシの視線を感じたのでその手を引っ込める。
なんだろう。この気持ちは。
どうしたのだろうか。この感情は。
早く、彼女の開いた瞳を見つめたい。
なんて。