第3章 苦しみと決意と
「……素直じゃないな、此奴も。」
「えぇ、全くです。奏音さん、連絡したら来てくれますかね?」
安吾は電子端末を弄り乍尋ねる。
「…一度やってみたらどうだ。
ん、でもこの時間なら寝てるか…」
作之助も心が決まらないらしく、珍しく思い悩んでいた。
「…あ、もしもし。坂口です。
えぇ、何時もの所です。すみません…お願いします。」
「え、もう電話掛けたのか?」
作之助が気付いた時には安吾は電話を掛け終えていた。
「えぇ、埒が明かないので。
しかも奏音さんの方が澪さんより太宰くんの扱いはうんと上手いので。」
そう云って安吾は残りの酒を全て飲み干した。
その十数分後、奏音がバーに入って来た。
『すみません…!はぁ…治ったら………
何時もは酔い潰れたりしないのに。』
溜息を漏らし乍も不思議そうな奏音。
「あぁ…多分だが、東方遠征に行くのが嫌らしい。再三愚痴を零していた。」
作之助がさらっと暴露話をする。
『そう、ですか…
私も東方遠征行くことになったんですけどね…』
奏音がそう小さくつぶやいた時だった。
「奏音、それは本当かい?!」
太宰が急に起き上がり奏音の両手を握る。
『え、えぇ……
……って…治?狸寝入りだったの?』
奏音はジト目で太宰を見詰める。
「否、安吾が君に電話を掛けてる辺りで起きたのだよ?」
「大分早い段階で起きてましたね。」
安吾の適切なツッコミで場は和む。
『さてと。治、帰ろうか。』
そう云って奏音は太宰を立たせようとする。
すると…
「ンっ……」
太宰の唇が奏音の頬に触れたのだ。
『え………お、治、?!』
困惑顔で頬を押さえる奏音。
彼女が太宰の顔を覗くと、へにゃりと笑い、酔い潰れた顔がそこにはあった。
『酔っ払って…これは酷い……
あ、ごめんなさい、もう帰りますね。』
そう云って奏音は異能力を発動させる。
『では、お休みなさい。』
礼儀正しく二人に就寝の挨拶をして奏音と太宰はその場を去った。