第2章 悪夢
「ほんと、業くんって僕の使い方粗いよね。
今すぐ消しても良いんだからね?僕には造作もない事なんだから。もう少し自重しな?」
物騒な言葉をつらつらと並べ乍、業と殆ど歳の変わらなさそうな見た目の男性が現れた。
言葉とは裏腹にその状況を楽しんでいるような笑顔も見受けられる。
「……有島くん……君も未だ生きていたのか。」
鴎外は乾いて上手く動かない口を少し動かし、
声にならない声でそう呟く。
「あぁ。あんたに用事は無いんだよね。
ねぇ奏音。僕らのこと、覚えてるかい?」
有島は鴎外を他所に、座り込む奏音の前に片膝を付き、腰を落として話し掛ける。
「辞めなさい。奏音に近付くな。」
鴎外は突発的に声を荒らげる。
此処まで取り乱した彼は滅多に見られないだろう。
「五月蝿いんだけど。」
そう云って有島は右片手を上に向ける。
「異能力────幻想。」
彼の言葉に呼応し、彼らの居た部屋の壁が変形する。そして鴎外と有島、業、奏音の間に壁を隔てる。
「さてと。邪魔者は退治だ。
奏音。僕らとおいで。
君を、素晴らしい世界に連れて行ってあげる。」
有島は奏音の片手をとり、手の甲に接吻を落とす。
『…で、でも…2人は、死んでいて…
な、なんで触れてるの、?』
奏音は疑問符に頭を支配される。
一方、壁の向こうでは鴎外がエリスと作戦会議をしていた。
「…エリスちゃん。頼むよ。」
「リンタロウの莫迦。
ちゃんと奏音を守りなさいよ!」
そう云ってナース服に身を包んだエリスは勢い良く壁に注射器を刺してゆく。
すると、所々穴が空き、壁が脆くなってゆく。
「あと少し、ね。リンタロウ、こっちから攻撃が来るかも。気を付けて。」
「ありがとう。あと少し、頑張って…」
暫しの健闘の後、遂に壁は崩壊した。
すると、壁の向こう側では、奏音の右腕が有島に、左腕は業に掴まれている処であった。
奏音も必死に抵抗しているが、未だ心に迷いがある所為か抵抗の力は徐々に弱くなっていく。
「奏音。大丈夫、手荒な真似はしないよ。
しかも僕らは研究所に戻る訳じゃない。安心して。」