第2章 悪夢
『でも…矢ッ張り少しは怖い、よ…』
何時に無く弱気になっている奏音を目にし、鴎外の怒りも最高潮に達する。
「離れなさい。奏音から。今直ぐに。」
万人を圧倒する殺気と威圧感。
流石の有島と業も一歩後退る。
「奏音。此方に来なさい。
有島くん、業くん。今後一切奏音に近付くな。さもなければ…解るよね?」
鴎外は背筋が、否、全身が震え上がる様な低く深い声でそう云った。
「…業、此処は下がろう。
奏音、また迎えに来る。
その時までに考えておくんだ。」
呆然としている彼女にそう云い放ち、二人は
再び"扉を開けること無く"部屋から消え去った。
「奏音。大丈夫かい?」
鴎外は直ぐ様奏音の肩を支え乍そう問う。
『は、はい…大丈夫です。』
そう云い乍ふらふらと奏音は立ち上がり、
『すみません、一寸今日はもう休みたいです…』
遠慮がちにそう告げた。
「あぁ、そうだね。解った。じゃあまた明日。」
そう云って、鴎外は部屋から出ていった。
独り部屋に残った奏音はぽつりと呟いた。
『……もし業と有島さんの云ってる事が本当なら、私の居場所は此処じゃ無いのかもしれない。』
悲しそうに目を伏せて、彼女は寝台に潜り込んだ────。