• テキストサイズ

鏡薔薇【文豪ストレイドッグス】

第2章 悪夢





─────お父様っ……!』

そう云って奏音は鴎外に飛び付く。


「ははっ、長い時間離れて居たからね。
結構くるものがあっただろう?

それと、敬語も外せばいい。2人だからね。」

鴎外は自らの胸をトントンと叩いて見せる。


『うんっ…
ずうっと特務課の監視下だったもん…
息苦しかったよ…。


もしあの時、お父様が手紙をくれなきゃ…』


「でも一度は断ったじゃないかい?」

意地悪な顔でそう云う鴎外は全て解っている様だった。


『あ、あれは……
素直に応じられなかったと云うか…


は、恥ずかしかったと云うか……』

少し頬を赤らめ乍言葉を濁す奏音。



「ははっ、勿論解っていたよ。
奏音の事だから、いきなりは素直になれないんだろうなと予想はしていたからね。」

そう云って笑う鴎外は愉しそうだった。


「それで?太宰くんとは上手くやっているのかい?」


『…うん!やれてるよ!』

答えるまでに少しの間があったのを鴎外は聞き逃さなかった。


「そうでも無いみたいだね。

明日の夕刻から彼は東方遠征だから、それまでに仲直りをしたいならしときなさい。」

愛娘を心配し、慈しむ様な目。
こんな優しい眼差しを向けられるのは奏音だけだろう。


『うん…そうする。
ありがとう、お父様。』

安堵の表情をうかべる鴎外。
だがその表情の裏には複雑な感情が入り交じっていた。



「じゃあ本題だ。
今朝見た悪夢のこと、私に話せないかい?」


その話だと思った。と云わんばかりの顔で奏音は鴎外を静かに見詰め返す。


『…話すことは出来るけど………


……解った。話すよ。』

鴎外の放つ気迫に押され、渋々話し出す奏音。


『実はね…





「やだなぁ。僕と奏音の秘密でしょ?」

か、業、?!』

突如、彼女の話を遮る様に業が"扉を開けること無く"奏音の執務室に現れたのだ。


「業くん。久しいね。」

鴎外は表情一つ崩さずに業に話し掛ける。


「ふんっ…白々しい。
僕のこと殺しておいて良くそんなこと云えたよね。」

業は鴎外を睨み付け乍、奏音の腕を掴む。


「奏音。矢ッ張り帰ろう。
君はここに居ちゃいけない。






そうですよね、有島さん。」

/ 114ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp