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鏡薔薇【文豪ストレイドッグス】

第2章 悪夢





『…龍之介。居る?
入っても…良いかな、?』

奏音は遠慮がちに扉の向こうに居るであろう人物に声を掛ける。


「……誰だ。」

低い声が扉を開ける手を躊躇させる。


『…私。奏音よ。』

彼女が名前を告げると、中から凄い物音が聞こえてくる。


『だ、大丈夫?!入るわよ!』

奏音は意を決して扉を開ける。

すると、部屋の中では芥川が寝台から落ちていた。


『ど、どうしたのよ……』

「…奏音さん。お久しぶりです。」

奏音の質問はそっちのけで体勢を正して彼女に向き直る芥川。


『久しぶりね。先ずは中々顔が出せなかった事を詫びさせて。ごめん。』

奏音は勢い良く頭を下げる。


「っ!
…奏音さん…、頭を上げて下さい。」

芥川もあたふたし始める。


『私の事、探してくれていたって銀ちゃんから聞いたわ。ありがとう、嬉しかった。』

そう云って奏音は涙を流す。

「…僕の力が及ばず……」

そこ迄云って黙り込む龍之介。
良く見ると、唇の端を硬く噛み締めていた。



『違うわ。貴方がどれだけ頑張ってもきっと私の事は見つけられ無かったと思うわ。』

真っ直ぐに正面を見る彼女は迚凛としていた。



『さてと。ねぇ龍之介、この話は終わりにしましょう。

向こうで黒蜥蜴の皆とお茶してたんだけどどうする?』


「…申し訳無いですが遠慮させて頂きます。」


『そう…解ったわ。また今度一緒しましょう?』

そう微笑んで奏音は部屋を後にした。



◆◆◆◆


─────と在る温室にて。


「……はぁ。疲れたねぇ。」

「ええ。お疲れ様です。
…ありがとうございました。」


「ほんとだよ!君ったら…
僕がどれだけ必死に耐えていたか…」

「申し訳ないです。
ち、ちなみに僕って………」

「あぁ、大丈夫。この儘此方に居れば良いさ。
僕の力に掛かればそんなもの、夕飯前さ。」


「……朝飯前ではないのですか?」

「うん。朝飯前は眠くて無理。」


「……そ、そう云う問題ですか、?」

「否?違うよ?」


呆気に取られた少年とけらけらと笑う少年よりも
五,六歳程上に見える青年が二人。

異様な雰囲気を放っていた──────。




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