第2章 悪夢
【奏音side】
何だったんだあの子は。
私が居た頃にはあんな無礼な子は居なかったのに。
何時の間にポートマフィアはこんな処になってしまったのだろう。
『治…』
会いたくて一緒に居たくて仕方の無い人の名前を空で呼ぶ。
何故治はあんなに澪に優しくしているのだろう。
何故みんなの前で治、澪、なんて呼び合えるのだろう。
────羨ましい。
嫉妬心が私の心を蝕む。
矢張りポートマフィアに居るのが間違いなのか…。
否、私の人生その物が、か。
『治の莫迦……』
結局終着点は此処なのだから私もまだまだ子供だ。
自分の悪いとこは見付けたく無いし、認めたく無い。
「太宰君がどうしたのです?」
突然声を掛けられ肩が跳ね上がる。
『吃驚した…広津さんかぁ……』
見慣れた顔で安堵した。
広い回廊の真ん中で一人佇んでいる私を不審に思ったのだろう。小首を傾げながら彼は近付いて来た。
「ふむ…その顔はまた一人で溜め込んでいらっしゃるようだ。」
美味しいお茶でも入れようか…
なんて一人でぶつぶつ喋り乍広津さんは歩き出した。
「……来ないのですか?」
不思議そうな顔で見つめられる。
『行きます。久しぶりですもん!』
◇◇◇◇
広津さん達の居る部屋は相変わらず片付いていて綺麗だった。
「………ッ?!!
奏音?!ほんとに奏音なのかよ?!」
部屋に入って数秒で肩を掴まれる。
『…ええ。久しぶりだね、立原。』
声だけで誰か解るし、こんな風に騒いでくれるのは立原しか居ない。
「もう戻って来ねぇかと思ってた…
良かったぁ!これでまた連射の勝負出来るな!」
……この子の頭の中には銃の事しか無いのかな…。
そう不安になる程銃の事しか喋らない。
今度の銃の口径は9mmだとか、飛距離が伸びただとか。
「あぁ!ごめん…俺また喋り過ぎて…」
私の顔色から察したのだろう。
申し訳なさそうに顔を覗いてくる。
『良いよ。また今度ちゃんと聞くね。
その時は私の愛用も持ってくるから。』
そう云うと立原は顔を煌めかせ乍賛成してくれた。
「…話にキリは着いたかな?お茶を持ってきたが…
立原。銀を呼んできてくれ。」