第2章 悪夢
「────ちゃん!奏音ちゃん?!大丈夫かい?随分と魘されていた様だけど……」
太宰は心配そうに彼女の顔を覗き込む。
『だ、大丈夫です。心配かけてごめんなさい…。』
奏音は少し肩で息をし乍答える。
「どんな夢だったンだ?手前が魘されるなんて。」
『え、ええと……
過去の、過去のトラウマについての夢だったんです。』
目をゆっくりと伏せながら、そう静かに告げた。
「そうか…それは辛かったね。
私と中也は起床時間だけど、奏音ちゃんは未だ寝てい給え。森さんにも軽く告げておくから。」
『ありがとうございます。
お言葉に甘えさせて頂きたい、です。』
布団を目元まで持ち上げて恥ずかしそうにそう云う奏音。
そんな彼女の様子を見て少し顔を赤らめる中也。
「任せとけ。ちゃんと首領に云っておくから。
行くぞ、太宰。」
中也は太宰の首根っこを掴んでそそくさと部屋を出ていってしまった。
『……眠い。寝るか。』
そう独り言を呟いて、奏音は眠りに落ちた。
◇◇◇◇
「…森さん、入るよ。」
ノックも程々にして、太宰は首領室に入った。
「太宰くんと中原くんだけかい?」
部屋の奥には白銀のティカップで優雅に紅茶を楽しむ鷗外の姿があった。
「奏音ちゃんが悪夢の異能によって睡眠を妨げられちゃったから、もう少し後でも良いかと。」
太宰は自らの蓬髪を弄りながら状況説明をした。
「成程、ね。
まぁ今日は彼女もゆっくりするといいさ。
あ、後、太宰くん。明日の夕刻から東方遠征の指揮頼むからね。」
「……げぇッ
私じゃなきゃ駄目?」
太宰は下唇を引き攣らせて嫌がる。
「げぇッ、じゃねェよ。
手前の仕事は手前で片せよ。」
空かさず中也が太宰に突っ込む。
「相変わらず君たちは仲が良いねぇ。」
マドレヱヌと云う西洋のお菓子を頬張り乍鷗外は笑う。
「仲良くなんかありません!
それは……首領の勘違いです。」
中也は空かさず声を上げた。
「そうそう。こんな蛞蝓みたいな脳筋と一緒にして欲しくないね。」
太宰も直ぐに同調する。
「ほらね?そう云う所が似ているし、仲が良いんだろう?」
鷗外は満足そうに喉を鳴らして笑った。