第1章 星降る夜になったら
12月12日
壁にかけられたカレンダーを見た。
「あと2週間か……」
私には恋人はいない。
でも密かに想いを寄せている人は、いる。
次にフルカラーで刷られた一枚のフライヤーを手に取る。
“acceso 2020.1.8 MAJOR DEBUT”
「インディーズの見納めは明日になっちゃったなぁ…」
フライヤーを眺めながらぽつりと呟くと、私はこの日のために新調した真っ白い便せんを取り出し、ペンを握った。
“acceso Levi様”
心地の良い低音を響かす、長細くて繊細な指先
スポットライトに浮かび上がる首筋、輪郭
筋の通った鼻、薄い唇
前髪の奥から覗く、鋭く光る眼光
大好きで、大好きでたまらない。
けれど、決して手の届かない人。
そしてこれからもっともっと遠くへ、行ってしまうであろう人。
そう、私の片想いは一生叶うことなどないのだ。
星降る夜になったらー