第8章 うさぎさんのバレンタイン
「ほら、いつもうさぎに会いに来る…」
エミリーさんが言いかけたとき、うさぎさんは後ろから声をかけられました。
「う、うさぎさん…
こ、こんにちは」
うさぎさんが振り返ると、山猫のノラさんがいました。
「こんにちは、ノラさん
今日は、どこかにお出かけですか?」
「い…いや…、あの…
材料…仕入れ…」
相変わらず、ノラさんはうさぎさんの前だと上手く話せません。
「わたしはチョコ作るから帰るね」
(ノラさん、チャンスよ
しっかり気持ちを伝えなさい)
エミリーさんはノラさんを小声で励まし、大きなチョコを抱えて帰っていきました。
「エミリーと何話してたの?」
「えっ?あっ、いや…何でもないよ
それより…
うさぎさんもチョコ…
作るの?」
「わたしは作らないわよ
チョコたくさん食べると太っちゃうでしょ」
「あ、あの…
食べるのは、うさぎさんじゃないけど…」
「あっ!そうよね、ウフッ
ねぇノラさんはチョコ好き?」
「た、たくさんは食べないけど…
煎餅の方が好きかも…」
「じゃあ、今度一緒にお煎餅食べましょ♪」
結局、ノラさんは気持ちを伝えることはできませんでした。