第3章 うさぎさんの憂鬱
今日のうさぎさんは、梟の源さんちに来ています。
「源さんはず~っとここで暮らしているの?」
「そうじゃよ
生まれ育った場所じゃ」
源さんは答えました。
「他で暮らしたことはないの?」
うさぎさんは質問しました。
「うむ、若い頃に西の都で少し暮らとったが、馴染めなかったわ
あまりに目まぐるしくてな…
それがどうかしたのか?」
源さんは首を傾げました。
「越してきたばかりだから、見る物全て新鮮だし、みんなも優しくて楽しいんだけど…」
うさぎさんはちょっと落ち込んでいます。
「うさぎさんは、月の山から来たと言っておったのぉ
どんな所なんじゃ?」
「月の山は兎だけで、ここみたいにいろいろな動物はいないわ
野山を駆け回ったり、近くの温泉に浸かったり…
仲秋の名月の時は、山頂でお餅搗きするのよ」
源さんは、うんうんと頷いています。
「それは楽しそうじゃ
故郷は遠きにありて思うもの
と言うじゃろ
離れてみて気づく良さもあるものじゃ」
そこに熊のゴンさんが、息を切らしながらやって来ました。
「はぁ…はぁ…
源爺っ!大変だ!」
「どうした、ゴン?
そんなに慌てて…」
「どうしたもこうしたもねぇよ!
山裾に温泉が出たんだ!」
『温泉っ!?』
源さんとうさぎさんは顔を見合わせて驚きました。