Happy Birth Tea(進撃の巨人)《リヴァイBD》
第1章 移動販売カフェ
リヴァイの正論でしかない説教に少し項垂れたフユにハンジはよしよしとフユの頭を撫でる。
『フユが親切でやっていることは我々も知っている。リヴァイの言う通り、君は大盤振る舞いのところがあるかな』
『そうだな。フユの店の紅茶は匂いも味もいいから俺は好きだ』
エルヴィンは腕を組んで小さなお店のグロリアを見渡し、ミケはリヴァイの持っていたカップをサッと横から奪うとそのまま飲む。
自分が飲むつもりだったリヴァイは小さく舌打ちをした。
『まぁまぁ皆そんなフユを責めないの!フユ?皆怒ってるように聞こえるかもしれないけど、ただ心配してるだけだから気にしちゃ駄目だよ?』
『ハンジさん、ありがとうございます。皆さんが心配してくれてるの理解してます。それに調査兵団の偉い人たちが、こうやって来てくれるようになっただけでも凄いことです!』
フユがグロリアをオープンしたのは半年前。
土地代が高い場所を誤って契約してしまい、売上げと経費諸々を合わせると赤字になりかねない状態だった。
オープンして早くも店仕舞いしないといけないかもと落胆していると、たまたま会議で来ていたリヴァイがグロリアを見つけたのがきっかけであった。
『美味い紅茶が飲める店を探している』
『それならこのグロリアにお任せ下さい!』
移動販売というのが浸透していないご時世に、リヴァイもまさか店だとは思わず、ほぅと驚いていたのは記憶に新しい。
フユが淹れた紅茶はフユの人柄が滲み出たような温かみと安らぎがあった。
『…悪くない味だ。………美味い』
『あ、ありがとうございます!!良かった~!』
飲食業をしていて、お客さんからの美味しいという言葉程嬉しいものはない。
フユは安堵から心の底から笑顔でお礼を言った。
この時のフユの笑顔を見て、リヴァイは心臓が掴まれたような気分を初めて味わった。
『チッ…何なんだ…』