第3章 三人の子供達
「良い匂いがすると思ったら、柚がドーナツを作っていたんだな」
幸村様が、嬉しそうに言った。
「おお、太郎、お前もドーナツの匂いに釣られて来たのか?
幸村様が太郎の頭をわしゃわしゃ撫でながら言った。
「父上!違います。俺は今から、佐助兄ちゃんと川に鮎を取りに行くんです!母上が、俺と佐助兄ちゃんのためにドーナツをたくさんくれたのです!」
「太郎、お前には、まだ鮎取りは、危ないからな」
「父上!鮎取りは、佐助兄ちゃんがします!俺は佐助兄ちゃんが鮎を取るところが見たいのです!」
「本当に見るだけか?太郎」
「はい!母上とも約束しました!」
「分かった。くれぐれも、川の中には、入るなよ。近付き過ぎも危険だからな」
「はい!父上!じゃあ、鮎取りに行ってきます!」
太郎は、ドーナツが入った風呂敷包みを大事そうに抱えると、台所から飛び出し、パタパタと庭で待ってる佐助くんの方へ走って行った。
「太郎と佐助は仲の良い兄弟のようだな」
幸村様が、仲良く連れ立って、鮎取りにゆく太郎と佐助くんの背を見つめて目を細めて言った。
「はい。佐助くんは、本当に良い太郎のお守り役でございます」
「ああ、佐助も弟分が出来て嬉しいのだろう」
幸村様は、からりと笑うと、わたしを後ろからぎゅっと抱き締め、
「柚、お前には感謝しているぞ」
と言ってくださった。
「幸村様の嫁でいる事はわたしの人生で一番かけがえのない幸せです」
「ありがとう。柚そう言ってくれて。お前は本当に俺の宝だ」