第1章 死んだらどうなる?
眩い光りに包まれ、闇から抜け出した。
「ようこそ、死後の世界へ」
私はその穏やかな声で我に返った。
目の前の老紳士は微笑んでいた。
「ここは天国…ですか?」
老紳士は首を横に振った。
「あなた方が思い描く天国や地獄なんてありませんよ
肉体を失った精神は、この死後の世界にやって来るのです」
老紳士は至って落ち着いた口調で話した。
「では、あなたは神様でもないと?」
「はい、あなたも長い間生きてこられたなら分かっていると思いますが、神様などいません
私はただの案内人です」
老紳士は改めて一礼した。
聞きたい事は山ほどあるが、言葉が纏まらない。
「ここは…いや…私は……はぁ…」
「焦らなくても、ここには時間の概念はありません
先にここでの注意点をお話ししましょう」
老紳士は穏やかに話し出した。
「先程、私は案内人と申しましたが、私もここの魂の一つに過ぎません
新しい魂が来ると近くにいる魂が案内人の役割を与えられるのです」
「役割?」
私が首を傾げると老紳士は軽く頷いた。
「ここに来る魂の数は膨大です
案内人を準備する事など不可能でしょう
ですから、近くにいる魂が誰に言われる事もなく案内人としての役割を担うのです」
老紳士は淡々と語る。