第3章 転生
「あなたは転成したいですか?」
答えはなんとなく分かっていた。
時間の経過も考えず過ごせる環境なんて生きていた時には考えられない。
「転成はまだしたくないですね
こんなに心が穏やかになる場所なんてありませんよ
誰ひとり敵意を感じないですから…」
転成を願っている人なら敵意丸出しなのかも知れないが、普通の人は審査されていると思えばおとなしくしている。
それを差し引いたとしても、みんながここにいたいと言う事なのだろうか?
私は何人もの人に同じ質問をしたが、理由はそれぞれだが答えは同じだった。
あるアメリカ黒人は…。
「私は黒人と言うだけで差別され、理不尽な仕打ちを受けてきた
ここは肌の色で差別されない
しかも銃や武器がないだけじゃなく、暴力すら存在しない
これ以上の平和は有り得ない」
と言う。
また、あるアラブ人は…。
「始めは神が存在しなくて絶望したし、異教徒がいる事も不安だった
しかし、ここで話して見るとそんな事は些細な事だと気付かされた
宗教差別も宗教戦争もないし、貧富の差もない
人間界になんて絶対帰りたくない」
と言う。