第7章 破壊力抜群
元炎柱である煉獄杏寿郎のもとで、継子として日々鍛錬に励んでいる雪。
先の戦いで負傷し、柱を引退してもなお一般隊士として精力的に任務にあたっている杏寿郎。
何の問題もないように思えるが、雪にとっては困った事が起きていた。
『はぁ〜、ヤバい。あれはヤバい。』
ぶつぶつと独り言を言いながら、廊下を歩く雪。
何がそんなにヤバいのか…それは杏寿郎の見た目にあった。
『眼帯ってヤバくない!??何あれ、めっちゃカッコいいんですけどっ!?』
そう。
左目が見えなくなった杏寿郎は、常に眼帯をするようになっていた。それも黒い眼帯を。
ただでさえ顔が整っているというのに、明るい髪色に黒い眼帯が映えて、より一層カッコよく見えている。
その証拠に、以前よりも周りの女性隊士たちからの視線が増していたのだった。
『眼帯をつけてからというもの…師範に群がるわ、群がるわ…今更気づいたって遅いんだからねっ!!』
「何が遅いんだ!?」
『ぎゃっ!』
雪が天井に向かって叫んでいると、後ろから杏寿郎が声をかける。突然のことに驚いた雪は変な声が出てしまった。
『し、師範!稽古は終わられたのですか?』
「うむ!そろそろ任務の時間だからな!雪、お願いしても良いだろうか?」
『!…あ、はいっ!』
そう言うと、杏寿郎は手に持っていた眼帯を雪に渡し、そのまま目を瞑って前屈みになる。
毎回頼まれるのだが、雪はこの時間が1日の中で一番緊張してしまう。
『し、失礼します……はい、出来ました。』
「ありがとう!しかし、相変わらず堅いな。」
『それは、自分の師範に触れるんですから緊張くらいしますっ!』
「はっはっはっ!そうか!」
『わざとやってますか?』
「髪を結う事は出来るのだが、なぜか眼帯だけは無理だ!落ちてきてしまう!」
そう、杏寿郎はなぜか眼帯を結ぶのが下手くそで、自身ですると必ず解けて落ちてきてしまうのだった。
ある日、たまたま手が空いていた雪が変わりに結ぶと、夜までしっかりと固定されたため、その日から担当になってしまった。
『(いや、私としては師範に触れられるから良いんだけど…って変態かっ!)』
違ーう!!と頭を抱える雪を見て、杏寿郎は笑う。