第5章 あなたの色に染まる心
ー師範!ー
ー師範!今の見て下さいましたか!?ー
ー師範!どこまでもお供します!ー
ーお慕いしております…杏寿郎さん、ー
ー嫌ですっ、置いていかないでっ!!ー
『…っ、』
朝目覚めると、目元が濡れていた。
はっきりと覚えていないが、やけにリアルだった。
嫌な感じがするな…と、雪はベッドから起き上がって着替える。
白羽 雪
キメツ学園に今年の春から通う、ごくごく普通の女子高生。
ただ一つを除いては…
『結局、この年まで何の色も分からないな…』
色の認識が出来ないこと。
小さい頃からモノクロの世界で生きており、病院であらゆる検査をしても異常は見つからず、それならばと色覚補正のサングラスを掛けてみたが何も変わらなかった。
両親はものすごく落ち込んだが、当の本人はもともと色を認識出来ていなかったので、ピンときていなかった。
『さぞ、この世界は美しいんだろうな…』
キーンコーンカーンコーン!
「起立!礼!」
日直の号令から1日がスタートする。
『1限目から歴史の授業かぁ…』
「今日から歴史の先生変わるみたいだよ。」
『え?!そうなの?』
「おいじいちゃん先生が体悪くしちゃったんだって。」
『カナヲ、そんな情報どこから仕入れるのよ…』
「企業秘密。」
仲の良い友達であるカナヲから、歴史の先生が交代することを聞いた雪は、今度はどんな先生が来るのか…と呑気に考えていた。
この出会いが、雪の人生を大きく変えることも知らずにー