第3章 実弥との出会い 〜その後〜
「答えろやァ。」
『…〜っ、し、師匠と、…手を繋ぎたいですっ!』
「ん、」
ぎゅっと手を握り、意を決して告げる。
そんな雪に、実弥は自分の手を伸ばす。
「繋ぎてェんだろ。手。」
『〜〜っ!!し、失礼します!』
恐る恐る、伸ばされた手に自分の手を乗せる。
やっと恋人である実弥に触れる事ができ、雪の表情は一気に綻ぶ。
「違ェだろ。」
『ぁ…うぇっ?!』
「ははっ…なんだ、その言葉は。」
ただ手を乗せられただけの状態から、実弥は自分の手を動かして指を絡めた。俗に言う恋人繋ぎと言うやつだ。
その瞬間、雪の口から言葉でない言葉が発せられて、思わず声に出して笑ってしまう。
『し、師匠が笑った!』
「人をなんだと思ってやがる。おら、次は何だったっけなァ?」
『……か、髪の毛を…触りたい、です。』
「これで触れんだろォ。」
雪が触りやすいように顔を下に向けた。
そんな実弥の行動1つ1つに、雪は大きく揺さぶられる。心臓の音が聞こえてしまいそうならくらい、うるさく高鳴っている。
『…柔らかい…』
「そうかィ。そりゃ、良かったな。」
雪が手を離すと同時に、実弥が顔を上げる。
「悪かったなァ。時間が作れなくてよ。」
『師匠は柱ですから!お忙しいのは当たり前ですよ!私の方こそ…我儘ばかりすみません。』
「雪が気にする事じゃねェ。これからは、なるべく時間を作るかァ。」
『あの、師匠…』
「なんだァ?」
『手は…その、、』
「……誰が離すかよ。」
『?!…心臓が保ちません…』
「なら、慣れるこったな。」
師匠には何かもう色々と絶対叶わない。
今回の1件で思い知らされた雪は、早く慣れようと絡めた指に力を入れた。
「次は名前で呼べるようにならねぇとなァ?」
『ひぇ…』
慣れるのは当分無理かもしれないー
Fin.