第3章 実弥との出会い 〜その後〜
師匠である不死川実弥と付き合い始めた雪。
ラブラブな時を過ごせるかと思いきや……
「任務に行ってくる。」
『行ってらっしゃいませ。』
「鍛錬に行ってくる。」
『行ってらっしゃいませ。』
「今日は任務と会議があるから遅くなる。」
『はい、承知しました。』
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『何このすれ違いっぷりはっ!!!』
「「「?!!!」」」
突然大声を出した雪に、周りの隠達が驚く。
『…ごめんなさい。』
「避けられてんじゃねぇかってくらいすれ違うな。」
『あ、後藤さん。お疲れ様です。師匠に用事ですか?』
「まぁな。お伝えする事があったんだが、また出直すわ。」
『そうですか。その旨、私からも伝えておきますね。』
「すまねぇな。」
隠の後藤と少し話した後、雪は主のいない部屋でぼんやりと考えていた。
ーこれはまだ"使えない"ー
以前の戦いで、鬼が言っていた台詞。
あれは一体、どういう意味なのか…
鬼の術が完璧ではなかったという事なのか、それとも別に方法があるのか。
『あー、もう分かんない!色んな書物読んだけど、そんな術を使う鬼なんて書かれてなかったし!』
畳の上に大の字に寝転ぶ雪。
頭の中は色々な事でごちゃごちゃになっていた。
『分かんない事だらけだ!せっかく師匠と恋仲になったのに、全然お側にいる事出来ないし。まだ手も繋いでないし…あのふんふわした髪の毛にも触ってみたいし…繋ぎたいよー!触りたいよー!』
「そういう事はデケェ声で言うんじゃねェ。」
『し、師匠?!』
慌てて起き上がると、廊下に顔を真っ赤にして口元に手を当てた実弥が立っていた。聞かれた事に気づいた雪は、ただ口をパクパクさせた。
『あ、あの…どこ、から聞いて…』
「分かんない事だらけって所からだァ。」
『サイショカラジャーン。』
「んで、」
『?』
そう言いながら、雪の前に胡座をかいて座る実弥。
先程までの動揺は無く、まるで標的を見つけたハンターのような顔をしていた。
「"誰"と"何"をしたいって?」
『き、聞いてたんじゃ!?』
「あァ?知らねェな。」
『切り替えが早い…』
「そりゃ、どーも。」
わざと強調するように言う実弥に、今度は雪の顔が赤くなる。