怨念の一輪草【終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
第7章 選抜術式試験
それを周りから聞こえてくる声で気がついた。
「最悪…」
深夜
「心の声漏れてるよ」
思わず漏らした私に深夜は声を潜めて指摘する。
深夜
「でもこれも愛梨ちゃんの自業自得。目立ちたくないのに僕の事を気にしすぎて勝負を急いだのがミスだったね」
「…丁寧に説明していただいてありがとうございます」
わざわざ自覚した後に追い打ちをかけてきた深夜。
それに対して私は手遅れな気がするが、キャラを守る為に引き攣りそうな笑顔でお礼を言う。
深夜
「愛梨ちゃん。顔怖いよ」
「気のせいです」
五士
「うわー、美人は怒ると怖いって本当なんだな」
「…あ」
いい加減その冗談でからかうのはもうやめて欲しい。
そう訴えようとした時、試合場へと向かっていく人を見て私は思わず声を上げた。
深夜/五士
「?」
会話をしていた自分達ではなく別の方向を見て声を上げた私を見て、2人は顔を見合わせている。
「2人はあの試合を見た方がいいんじゃないですか?」
五士
「?」
このままでは私が変な人になるのでそう言って、彼らの背後にある試合場を指差した。
深夜
「試合って…」
私の指先を追うように振り返る2人。
監督官1
「1年2組、雪見 時雨(ゆきみ しぐれ)。前へ」
するとタイミングよく、名前を呼ばれた女子生徒が試合場に上がっていく所だった。