怨念の一輪草【終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
第3章 悲しい恋物語
少女の苦しみや復讐心を知り、自身にも恋人がいたので気持ちがわかった従者はすぐに了承した。
そうして無事に子供を授かった少女は愛する人にも言わずに従者とその恋人だけを呼んでこっそりと男の子を出産。
そしてその日の内に子供を連れて従者は恋人と共に一瀬の家から離れたのだ。
一瀬の少女
「この子は男の子なのでその子孫に復讐を託します…。私の代わりにどうか女の子に復讐を果たしてもらって…」
従者
「わかりました。この子の事は我々に任せてください」
出産してすぐに少女は泣きながら従者とその恋人に頭を下げた。
従者の恋人
「あの…お名前はどうされますか?」
一瀬の少女
「復讐の為に作った子供など申し訳なくて私には名付ける権利すらありません…」
従者の恋人
「ですが…」
一瀬の少女
「…では苗字だけ、零崎と名乗らせてください」
それが幼い頃から仕えてきた従者と少女が交わした最後の会話だった。
零崎という苗字は本当は産まれるはずがなかった命だから何もないという意味と、自身の名前と同様に漢数字を入れたかったらしい。
それから言われた通り従者達は男の子を秘密裏に育て、話を語り継いだ。
でも一向に女の子が産まれない。
一瀬の血を引いた子を授かる度に零崎の人間が祈ったが、産まれてくるのは男の子だけだった。
そして500年も経過してから仕方なく、養子を引き取ったのだ。