怨念の一輪草【終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
第3章 悲しい恋物語
この世界はとても生きにくかった。
なぜならこの世界では生まれた瞬間から立場が決まってしまうからだ。
私に関係ある所で言うと、1番わかりやすい例は帝の鬼。
帝の鬼とは1000年以上前に創られた日本でも有数の宗教団体だ。
帝の鬼にはずっとトップに君臨し続けている柊(ひいらぎ)という家がある。
柊は帝の鬼に所属する者にとって神の代理者と呼んでもいい程に高貴な存在なのだ。
そしてその柊の下には10の名家が存在している。
一瀬(いちのせ)、二医(にい)、三宮(さんぐう)、四神(しじん)、五士(ごし)、六道(りくどう)、七海(しちかい)、八卦(はっけ)、九鬼(くき)、十条(じゅうじょう)
その全ての名家には数字が含まれている事が特徴で、一瀬家を除いた名家に序列はない。
私に最も縁が深い一瀬家。
かつては柊家を支える第一位の家柄だった。
それでも一瀬家は現在、最も低い階級になっている。
そんな事になってしまったのは悲しい恋物語にあった。
この悲しい恋物語の主人公は500年前、一瀬家の長女として生まれた少女。
その少女がとても美しかったので、柊家の長男と次男が取り合ったのだという。
最終的に少女の心を射止めたのは次男だった。
でも長男はそれを許さなかった。
なんと長男は少女を無理矢理犯して子供を孕ませると、更には次男を去勢してしまったのだ。