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怨念の一輪草【終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】

第5章 高校への入学




桜が舞い散る季節、春。
この零崎家に来て何度目の春だろうか。


現当主
「愛梨、準備できた?」

「はい」


私は今日、この家を離れる。
準備をして待っていると、当主様と母代わりの先代の奥さんが部屋を訪れた。


先代の妻
「制服似合ってますよ」

「ありがとう、お母様」

先代の妻
「…きっと先代も喜んでいるはずです」

「…はい」


私に一瀬家と柊家の過去を教えてくれた年配の男性。
彼は当時の零崎家の当主だった。

あの時は元気そうだった当主様。
でも私が養子になる事を受け入れた数日後、安心した様に息を引き取った。


現当主
「本当に無理だけはしないでね。チャンスは絶対にくるから」

「大丈夫です。お役目、果たしてきます」


当主様が亡くなった事で零崎家はその息子が受け継いだ。
私なんかに頭を下げた彼も今では立派な当主様。

そんな彼や前当主様、一瀬の少女の為にも私は絶対に成功させなくてはいけない。


「行ってきます」


笑顔で言って私は歩き始める。
別れの言葉は言わないが、もうここには帰って来れない事はわかっていた。

復讐が失敗すれば殺されるし、成功しても柊を殺した女を見逃すはずがない。
だからどちらにしても待っているのは死だけだ。


「………」


それでも私は振り返らずに歩いた。
ただ目的地のある方向だけを見つめて歩き続けたのだった。
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