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怨念の一輪草【終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】

第9章 戻った日常




肌寒さがなくなり、暖かくなり始める初夏。


「…暑くない?」


眩しい日差しに目を細めながら、私は横にいる男に話しかけた。


深夜
「そう?愛梨ちゃんって意外と暑がりなんだね」


腹ただしい程涼し気な笑顔で答えたこの男は柊 深夜。
なぜ深夜とこうして雑談をするような関係になっているのかというと、きっかけは深夜に治療をしてもらった日にあった。



*****



深夜
「これでよく軽傷だなんて言ったね」

「っ!もっと優しくしてよ…」


明らかにわざと痛むような手当てをしてくる深夜。
それに泣きそうになりながら訴えるが、深夜は笑顔を浮かべてこっちを見てくる。


深夜
「あはは、愛梨ちゃんってわがまま〜」

「いっ…」


こんな事なら自分で手当てすればよかった。
そう後悔してももう遅い。


「私をいじめたくて自分が手当てするって言ったの?」

深夜
「僕そんな酷い奴に見える?」

「みんなの前では爽やかな王子様だけど私の前ではいじめっ子にしか見えない」


見えないというよりはこっちが素なのだろう。
あのキャラよりも断然話しやすいので構わないが、行動にまでいじめっ子を出さないで欲しい。


深夜
「心外だな〜」

「全く思ってないくせに…」


そんな事を言いながら左腕をしっかりと固定して処置を済ませる。
かなり手際がよかったので自分でやるよりも格段に早く終わった。
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