怨念の一輪草【終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅】
第8章 乱入者
グレンと美十の横へ立った五士。
五士
「これが渋谷の真ん中の光景とはとても思えねぇよなぁ…」
彼はそんな事を言いながら辺りを見渡している。
上からだとここ以上に生徒達の死体が見えているのだろう。
いつものような顔ではなく、少しだけ五士は顔を歪めているように見えた。
五士
「お!」
「………」
五士でもこんな表情をするんだなと思いながら上を見続けていると、目が合ってしまった気がする。
美十
「いきなりどうしたんですか?」
グレン
「…!」
突然声を出した五士を不思議そうに見つめる美十。
グレンは五士の視線の先を追ったらしく、私がいた事に気づいたようだ。
五士
「ほら、愛梨ちゃんも生き残ってる」
美十
「零崎さん!?あなたも無事で…!」
笑顔を浮かべて私の生存を喜んでくれている2人。
そしてそれとは対象的な反応を見せるのはグレンだ。
グレン
「………」
彼は難しい顔をしてこちらを見てくる。
恐らく深夜とは違い、目的がわからない私に素の自分を見られたので警戒しているのだろう。
五士
「まあ、あれだけ強いんだからそりゃ生き残れるか」
美十
「ですね。昨日の試合は本当に見事でしたから」
「…それはどうも」
こんな状況でも一般生徒を演じる必要があるかはわからないが、一応返事はしておいた。
ただ余裕がないので愛想笑いはきっとできていないだろう。