第17章 絶好のバトル
「…なに…?」
私がそう聞き返すと、彼はふっと優しく笑った。
そして、少し俯いて頬を赤く染めながら、言いたい事があるんです。と、小さな声で呟いた。
「マイさん、……僕、…ずっと、…」
終始吃っていたカガリだったけれど、ふと何かを決めたように頷いて私を見つめた。
「マイさん、僕、これからもずっとあなたの事を尊敬しています。どうか、お元気で。」
「うん」
私は力強く頷く。
ほんの一瞬だけ瞳を揺るがしたカガリは帽子を深く被って私たちに背を向けた。
ざっ、ざっと砂利を踏み、船へと乗り込んで行くカガリを見て、改めて"別れ"というものを感じる。
大切な人がどこかへ行ってしまう、そんな寂しい感覚。
ごうごうと重低音を響かせる巨船のフェンス越しに立つカガリに必死に手を振ると、控えめにも手を振り返してくれる。
(カガリならきっと大丈夫……!!!!)
カガリなら新しい土地でも上手くやって行けるはず。
だって私の弟子だもの。
「行っちまうな……。」
去り行く船を見届けながら、キバナがふと口を開いた。
「………うん」
「寂しくはないのか……?」
「……うん…寂しくないかも。カガリならきっと大丈夫だもん。」
涙を隠すように俯いて答えると、キバナは慰めるように私の肩を抱いた。
こういう所なのだ。私がキバナを好きな理由は。
相手の気持ちを汲み取って、最善の行動をしてくれるキバナの優しい所に私は惚れている。
「飯、行くか……?」
「うん……」
カレーが食べたいとあとから付け足すと、オレも。と返される。
ああ……、やっぱり私の気持ちを1番分かってくれるのはキバナなんだ。
やっぱり……。私はキバナが好き。