第14章 祝賀会
「大丈夫?準備できた?」
「ん〜…」
「どうしたの」
刻一刻と空飛ぶタクシーとの待ち合わせ時間が迫る中、私たちはテキパキと準備を進めていた
普段着ないドレスは淡いミントグリーンの色。羽織るストールはターコイズブルー
ネックレスもつけて、時間をかけてメイクもして、髪型もオシャレなギブソンタックに綺麗な髪飾り
一方のキバナは、黒のタキシードを着こなしてバンダナの代わりの橙色のネクタイを締めたまま姿見の前でぼーっとしていた
髪型だってバッチリ決まっていて、すごくかっこいいのに。
「キバナ、大丈夫?」
「オレさま、こんなにカッコよかったのか」
「キバナ、頭大丈夫?」
若干ズレているネクタイを直すと、ありがとう。とへにゃりと笑う
その笑顔があまりにも不自然で、私は彼のほっぺを両手で包んだ
不自然な理由なんてわかってる。
自分のライバルを打ち破った相手の祝賀会なんて、私だって行きたくない
行きたくない、行かない。で済むなら、今ここに彼は居ないだろう。
だけど、責任と立場があるし、そんな甘い事社会は認めてくれない
「キバナ、笑顔なんて作らなくていいから。ね?」
「マイ……」
彼の蒼眼が一瞬揺らいだ
そして、私に抱きついて弱々しい息を吐いた
可哀想な竜。
ずっと噛み付いていた獅子は、竜が砂嵐を操る間に期待の新星と謳われた狼に奪われてしまった。
自分が倒すはずだったのに。
標的を奪い去った狼が主役のパーティなんてどんな顔をして行けばいいのやら。
私はキバナの背中に手を回して、慰めるように摩った。