第5章 方程式のつくりかた❥明智光秀
光秀さんが香夜さんを部屋に送って行ったのか、ありがとうございますという声がかすかに聞こえてきた。
その後に一言二言話したあと、
光秀さんはくるっと足をこちらに向けて半ば走るように向かってきた。
「光秀さん!」
私は光秀さんに声をかけた。
「!」
光秀さんは驚いた顔をして私を見つめた。
「華、どうしてここに...」
「光秀さんに会いに来たんですっ...」
そして、言ってはいけないと思っていた声が口をついて出てきてしまった。
「光秀さんこそ、何してたんですか?」
光秀さんが更に驚いた顔をした。
「私はっ、ずっと待ってたのにっ...」
止めなきゃと思うのに、止まらない。
「今日はっ...私達のっ...!!」
そこで光秀さんが私の言葉を遮るように口を開いた。
「一年、だろ?」
にやりと笑いながら言う。
(えっ...?)
なんで...
「お前と俺の大事な日を誰が忘れるやつがいるか?」
光秀さんは、覚えていてくれていたの?
「覚えていて、くれたんですかっ...」
今度は違う意味の涙が込み上げてきた。
いやでも、香夜さんは...
「あの、香夜さんは...どうして光秀さんにおんぶされていたんですか?」
「ああ、お前に会いに行こうと急いでいた時にな、香夜姫が来て足を挫いたとか言うからお前に早く会いたくて、ついおんぶしてしまったんだ。それで気分を悪くしたなら謝る。」