第49章 スタートライン!❥伊達政宗
(...政宗はそう言うってわかってた。)
そんなことを思ってしまった私に嫌気が差す。
そしてその言葉のあとにはきっと大阪に行けって、背中を押してくれるのだろう。
私が、悔いのない選択をするために。
でも、でも、でも。
悔いのない選択なんて、きっと今の選択肢にはない。
政宗のようにはっきりとしっかりと自分の決めたことに向かって進める強い人だったらいいのに。
私は、全部が大切で、全部が宝物で、
(どれかひとつになんて、絞れない。)
そう思って無意識に手をぎゅっと握りしめると、
「....でもな。」
「....?」
政宗が否定のような言葉を零した。
「俺はお前に悔いのないようにしてほしい。だがそれ以上に、
お前は俺のそばにいてほしい。」
「!!!!!」
その言葉に、体が固まる。
思ってもみなかった言葉とそれにふさわしいほどのまっすぐな瞳で見つめる政宗に、何も言えなくなった。
そんな私を見てふっと息を漏らす政宗。
「お前が思ってる以上に、俺はお前に....華に惚れてる。」
「っ....」
そんなの、ずるい。
まるで告白のような言葉。
それは一瞬で私の心を奪うのには簡単だった。
「っ、じゃあ....」
私はその言葉に押されるように声を出す。
「政宗は私に、ここに残ってほしいってこと....?」
「あぁ。」
すると間髪を入れずに返された声に心がきゅんと締め付けられる。
(...私は、こんなに政宗に愛されてるんだ。)
その自覚を否応なしにも出来て、体の芯が温かいものに包まれていく。
何故か政宗の前でもしていた緊張が、ほどけていく音がした。
「....そうだ、その顔。」
「...え、?」
ふいに放たれた言葉に政宗を見る。
すると
「俺はお前のそういう顔が見たかった。ずっと前から言ってるだろ、俺はお前の笑顔しか見たくない。」
「あ....」
やっぱり政宗にはすべてお見通しだったらしい。
でもそれさえも今は居心地が良かった。